社長

飛鳥製紙株式会社 榛名 慎一郎|「紙」は情報の器から、地球を救う新素材へ

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代表プロフィール

氏名榛名 慎一郎
役職飛鳥製紙株式会社 代表取締役社長
生年月日1967年12月10日
出身地静岡県 富士市
略歴1990年:大学卒業後、国内大手化学メーカーに入社。機能性材料の研究開発に従事。
1995年:家業である飛鳥製紙株式会社に入社。生産現場のデジタル化と品質管理体制を再構築。
2012年:環境対応型素材の開発を目指し「サステナブルファイバー推進室」を新設。
2020年:代表取締役社長に就任。「100年続く伝統を、未来の機能へ」という新ビジョンを掲げる。
2023年:森林資源を有効活用した、プラスチック代替の超高強度紙ボード「飛鳥ボード」を開発。

インタビュー

Q:今はあらゆるものがデジタル化されています。老舗の製紙メーカーを率いる身として、この「紙離れ」の時代をどう捉えていますか?

榛名 慎一郎: もちろん、情報を伝えるだけの「記録媒体」としての紙の需要は減っています。でも、私はそれを悲観していません。むしろ、紙が「情報の器」という役割から解放され、最先端の「機能性材料」として再注目される、面白い時代が来たなと感じています。

例えば、プラスチックに代わる強靭な梱包材や、空気を浄化するフィルターなど、紙にはまだまだ引き出せていない能力が眠っています。デジタルが普及すればするほど、手に触れる「実体」としての紙の価値、その温もりや機能が際立ってくる。今は、紙の第二の創業期だと思っています。

Q:榛名社長はかつて化学メーカーで研究をされていました。その経験は、伝統ある家業の紙づくりにどう活かされているのでしょうか。

榛名 慎一郎: 「紙は木から作られる」という当たり前のことを、分子レベルの繊維の結びつきとして捉え直すことができました。職人の勘は素晴らしいものですが、そこに「なぜこの強度が生まれるのか」という科学的な根拠を加えることで、品質が格段に安定したんです。

特に、2023年に開発した『飛鳥ボード』は、その結晶です。ただ厚い紙を作るのではなく、繊維の密度を極限までコントロールすることで、プラスチック並みの強度と、紙としての分解性を両立させました。伝統という土台に、科学という道具を添えることで、次の100年を戦う武器を作っている感覚ですね。

Q:環境問題への意識が高まる中、「木を切る」製紙業への厳しい目もあります。この点についてはどうお考えですか?

榛名 慎一郎: 「木を切る=環境破壊」というイメージを持たれがちですが、適切に管理された森林は、木を切り、植え、育てるサイクルを回すことで、より多くの二酸化炭素を吸収して元気になります。私たちは、地域の林業の方々と協力して、放置された山の資源を有効活用する仕組みを作っています。

プラスチックを減らし、循環可能な森林資源に戻していく。これが私たちの最大の社会貢献です。地球に還らないゴミを作るのではなく、いつかは土に還る、命の循環の一部としての製品を作り続ける。それこそが、創業時から変わらない私たちの誇りです。

Q:デジタル上の文字と、紙に印刷された文字。榛名社長が考える、紙にしかない「感情的な価値」とは何でしょうか。

榛名 慎一郎: それは「手触り」と「余韻」だと思います。大切な人からの手紙や、憧れのブランドの包装紙を開ける時の、あの独特の摩擦感や音は、画面をスワイプするだけでは決して得られません。

紙は、五感を通じて記憶に深く刻まれるんです。デジタルがスピードと効率を届けるなら、紙は「心に留める時間」を届ける。私たちは、機能性だけでなく、指先に触れた瞬間に「あ、いいな」と感じてもらえるような質感を、0.01ミリ単位の調整で追求しています。その贅沢さは、どれだけ技術が進んでも変わらない価値だと思っています。

Q:富士山の麓で110年以上。これから先の「飛鳥製紙」はどこへ向かおうとしていますか?

榛名 慎一郎: この地には、富士山の豊かな伏流水という、紙づくりに欠かせない宝物があります。私たちはこの恵みを借りて、100年以上商売を続けてきました。だからこそ、次は私たちが地球を癒やす番だと思っています。

世界中でプラスチックゴミが問題になっていますが、私たちの技術を使えば、その一部を紙に置き換えることができます。「かつてプラスチックだったものが、すべて紙に変わる日」を夢見ています。富士の麓から、世界中の海や山を綺麗にするための新素材を送り出す。それが、私たちが次の世代に引き継ぐべき暖簾(のれん)の重みだと思っています。

会社概要

会社名飛鳥製紙株式会社
設立1912年 (大正元年) 11月
従業員数285名 (2026年3月時点)
事業内容特殊包装紙・高級和紙の製造販売
産業用機能性フィルター
プラスチック代替紙素材の開発
建材用原紙の製造。
主要取引先国内外の食品・化粧品メーカー、精密機器メーカー、商社、全国の伝統工芸品卸。
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