和心工藝株式会社 和泉宗介|グッドデザイン賞「Komorebi」を生んだ、感性デザイン論
代表プロフィール

| 氏名 | 和泉 宗介(いずみ そうすけ) |
| 役職 | 和心工藝株式会社 代表取締役社長 |
| 生年月日 | 1983年02月15日 |
| 出身地 | 京都府 京都市 |
| 略歴 | 2005年:京都市内の老舗仏具製造卸会社に入社。営業職として百貨店・寺院への販路開拓を担当。 2013年:伝統的な技術と現代のライフスタイルを融合させるため、「和心工藝株式会社」を設立。オンライン販売とモダン仏壇の開発を主軸とする。 2018年:若年層をターゲットにしたインテリアに馴染むミニマル仏具シリーズ「Komorebi」を発表。グッドデザイン賞を受賞。 2022年:サブスクリプション型の位牌・仏壇の定期メンテナンスサービスを導入し、顧客との関係性を強化。 2024年:企業や病院向けに、空間デザインと融合したメモリアルスペースのプロデュース事業を開始。 |
インタビュー
Q:和泉社長は京都の老舗メーカーで経験を積まれた後、2013年に独立されました。伝統の世界からあえて飛び出し、新会社を設立されたのは、どのような問題意識や、クリエイティブな閃きがあったからでしょうか。
和泉 宗介: 老舗の技術は、本当に魂が宿るほど素晴らしいものです。しかし、その頃、日本の住宅環境や家族のあり方が大きく変わっているのに、お仏具だけが時が止まったように変わっていなかった。核家族化が進み、畳の部屋も減る中で、「立派な仏壇を置く場所がない」と悩む人が多かったんです。
私にとって、お仏壇は単なるモノではなく、亡くなった方との「対話の場所」です。この大切な空間を、現代の暮らしに自然に溶け込ませるデザインが必要だと強く感じました。伝統技術に、私の見てきた現代アートやプロダクトデザインの感性を融合させれば、必ず新しい形が生まれる。その直感を信じて、飛び出しました。
Q:貴社のミニマル仏具シリーズ「Komorebi」は、グッドデザイン賞を受賞するなど大きな反響を呼びました。このデザインはどのように生まれたのでしょうか?
和泉 宗介: 「Komorebi」の開発では、まず「畏怖の念」よりも「優しい光」をコンセプトに据えました。お仏壇は、時に厳粛すぎて、家族の距離を遠ざけてしまう側面もあると感じていたからです。
ヒントを得たのは、ある朝、リビングに差し込む木漏れ日の光でした。その光の中に、故人の存在を感じるような、温かくも静謐な空間を表現したいと。
特にこだわったのは、素材と質感です。従来の漆や金箔だけでなく、自然の木目や石、ガラスなど異素材を使い、空間に置いたときに心地よいオブジェとして機能すること。祈りの行為そのものを邪魔しない、引き算のデザインを徹底しました。
Q:仏具業界全体が抱える構造的な課題についてもお伺いします。技術の途絶が懸念される中、貴社が伝統工藝と現代的な開発を結びつけるために、どのような工夫をされていますか。
和泉 宗介: おっしゃる通り、技術の継承は待ったなしの課題です。私たちは伝統技術を「古いもの」ではなく「最高の技術」と捉え、若いデザイナーやエンジニアと職人を積極的に引き合わせています。
特に注力しているのは、「遊び心のある実験」です。たとえば、伝統の漆塗りをスマートフォンのような新しい素材に応用できないか、木工技術を現代の照明器具に応用できないか、といった具合です。技術の用途を広げることで、若い世代が「この技術を習得したい」と思えるような、魅力的な未来を示すようにしています。守るべきは形ではなく、その根底にある精神と技だと考えています。
Q:2022年に導入されたサブスクリプション型のメンテナンスサービスは、業界では画期的です。どのような狙いがあったのでしょうか。
和泉 宗介 氏: これは、お客様との関係性の再構築が最大の狙いです。
昔は、仏壇が壊れたら近所の仏壇店に相談し、何代にもわたって繋がりが続いていました。しかし今は、一度買ったら終わり、という関係になりがちです。
お仏壇は、家族の歴史を見守るものです。私たちは、専門家として定期的に訪問し、仏具を磨き、空間を整えることで、「祈りの場所」を常に最良の状態に保つお手伝いをしたい。このサブスクは、単なるメンテナンスではなく、お客様の心の移り変わりや、ライフステージの変化に寄り添い続けるための、新しい接点だと考えています。
Q:今後の和心工藝が目指すビジョン、そして和泉社長ご自身が描く「祈りの未来」についてお聞かせください。
和泉 宗介 氏: 私たちが目指すのは、祈りや供養の文化を、一部の人の習慣ではなく、誰もが自然に行う行為に戻すことです。
忙しい現代社会だからこそ、立ち止まって故人や自分自身と向き合う時間が必要だと感じています。未来の「祈りの空間」は、家の中のリビングの一角かもしれませんし、オフィスの一室かもしれません。私たちは、感性と技術で、その多様な「心の居場所」をデザインし続けていきたいと思っています。
会社概要
| 会社名 | 和心工藝株式会社 |
| 設立 | 2013年7月 |
| 従業員数 | 55名 |
| 事業内容 | 現代仏壇 モダン仏具の企画・開発・製造 オンライン・実店舗での販売 メモリアルスペースのプロデュース |
| 主要取引先 | 大手インテリア量販店、デパート、葬儀関連事業者、デザイン事務所 |

